田舎の子

ひ弱になったものだと思う。


帰省して二日目の昨夜、祖父が畑で刈ってきた枝豆の枝から、鋏で鞘を切り取る作業をした。地味な作業ではあるが、内心びくびくしていた。いつか衝撃的な遭遇をしないかと。


幼虫と。


田舎出身。小さな頃から、山や川、畑や田んぼに親しんできた私でさえ、都会の鉄筋コンクリートに守られた生活の中で、いつしか「幼虫」は、人生における天敵となった。


地元を離れて早10年近く。帰ってくるたびに、山は青く、緑は濃く、自然は原始に戻っていっている気がする。過疎化で人が離れ、自然が純化されている。


都会にいる間は、都会に自分の居場所はないと思い、心の奥底に地元の大自然を思い描いているが、ここに来て知るのは、自分の居場所は、ここにもないということ。大自然は、優しく、そしてどこかよそよそしい。


ひ弱になった。


都会は便利だ。田舎暮らしには苦労が多い。しかし、朝は蝉の鳴き声を聞き、太陽を存分に受けて育った野菜を食べ、夜は満天の星を眺め、虫の音を聞きながら眠りに入るという生活は、苦労こそあれ、豊かなものに思える。


一極集中する社会の中で、地方と都会という二重性の中で、生きる人は多くいるはずだ。


  卒業は上京のこと田舎の子


(帰省中徒然なるままに)